妄想家のトゥルース(ちびバーグ&フォンドヴォー)

VS with Y様  内容はGBAGreatに準拠しています


「いやっほ~~~~~♪」
「うわ―――、すげーすげー!トロッコって速いな―――!」
今はもう採掘が行われていないのか、壁にすえつけられたカンテラにも灯りは灯されていない。過去の時代に辿り着いたコロッケ一行はキンダック軍のおかしな動きを耳にし、クレソン鉱山へと足を運んだ。金属独特のむっとする匂いに周囲が参りかけている中、ひたすら元気に運搬用のトロッコで遊んでいるのはコロッケとバーグである。
「どうにかなんねえかな、あいつらの緊張感のなさ」
「子供を戦場に連れてくるのはどうも好かんのじゃがな」
「緊張しすぎて実力が出せないよりはいいさ。ただ、はしゃいでいるうちにキンダック軍に遭遇しないかが心配…」

どんがらがっしゃ―――――――ん!!

ウスターとタロ、シャーベットが会話を交わしていた矢先、鉱山の奥から何が起こったかが非常によく分かる音が響いた。
「コロッケ!バーグ!!大丈夫か―――!!?」
そして、それを聞くと同時に走り出す大人が一人。鉱山の奥から土まみれになった二人を小脇に抱えて戻ってくると、かいがいしく服の汚れを払い始める。
「ひゃ~、びっくりした!でも面白かったな、バーグ!」
「レールに切り替えのポイントがあったんだな。コロッケ、今度はあれをハンバーグーで狙ってみようぜ」
「おいおい。この先にはキンダック軍がいるかもしれないんだぞ。気をつけてくれよ」
「分かってるって!オレ達なら大丈夫だよ、フォンドヴォー!」
「そうだ、フォンドヴォー。オレとコロッケが乗ったらトロッコを押してくれないか?」
「…仕方がないな。よし、乗った乗った」
『わーい!』
いつもならお子様の指導兼保護に回るはずのフォンドヴォーなのだが、バーグの頼みを諌めるどころか二人を新しいトロッコに乗せ、それを全力で押してやっている。しかも、えらく楽しそうに。
「…あいつもどうしちゃったんだろうな」
「フォンドヴォーさん、なんだかこっちに来てからニコニコしっぱなしでっすね」
そんなフォンドヴォーの変化を目の当たりにしているプリンプリンとキャベツが顔を見合わせた。
「まあ、師匠に会えて嬉しいってのは分からないでもないんだが」
「いんじゃないっぺか?あー、トロッコ楽しそうだっぺなー。オラも乗ってくっかな!」
「それにしても最近のフォンドヴォーはテンションが高…あ、こら!Tボーン!」
リゾットが首を捻る横から、Tボーンが自分も混ぜろとばかりに三人を追いかけていった。またお子様がひとり増えたと言いたそうに溜め息を吐いたリゾットの横にハムがやってきてリゾットを見上げる。
「あの三人はすごく仲がいいですね。うらやましいです」
「何言ってるんだ。ハムだって、オレ達の大切な仲間だ」
「ありがとうございます。でも、何て言うのかな。コロッケさん、バーグさん、フォンドヴォーさんは…特別な何かでつながってるような、そんな気がするんです」
ハムにはバーグがコロッケの父でありフォンドヴォーの師匠の過去の姿である事は伝えていない。だが、幼いながらに頭の回転が速い彼には何か察する所があるのだろう。
「…でも、なんだかフォンドヴォーさん、ちょっと変わりました…よね」
コロッケとバーグが消えた鉱山の奥を見やるフォンドヴォーの顔には満面の笑み。これが過去に来てバーグに出会ってから四六時中キープされているとあれば、フォンドヴォーとの付き合いが短いハムであっても首を傾げるのは当然かもしれない。この事を気にしてないのはシャーベットと、あとは当のコロッケとバーグぐらいのものだろう。
「…いいんだけどな。別に…いいんだけど」
そうは口にするものの、リゾットの眉はしかめられたまま。明らかに食事の量をバーグだけ大盛りにしたり、キャンプの火の番は必ずバーグと一緒になるように組んだり、買い物をするにしてもバーグに最優先でいい装備を買い与えたりって、それってどうなんだ。今までの彼が非常に頼もしく明晰な判断で動いていただけに、そのギャップたるやかなりのもの。
そんなこんなで、本人は無意識、周囲には丸分かりの偏愛傾向まっしぐらなフォンドヴォーにツッコミきれないままに一行は過去を旅していたのだった。

「なんか道が狭くなってる」
「どうする?皆が来るのを待ってるか?」
トロッコの線路が果てた先は今までよりもずっと狭い空間。多分先へ続いているのだろう穴はコロッケとバーグなら通れる大きさだが、大人チームには難しいところだろう。二人が進退を決めあぐねていると、フォンドヴォーが追いついてきた。
「あれ。行き止まりか?」
「ううん、オレ達なら通れそうなんだけど」
コロッケが指差した穴を見てフォンドヴォーがふむ、と首を傾げる。今のところ敵が出てくる気配もないが、一度皆と合流してから行動を決めようと一瞬考えたらしいが。
「いいって、行こうぜコロッケ!フォンドヴォーがここで待っててくれるんなら大丈夫だろ?」
「だ…駄目だ、バーグ。二人だけで行って、何かあったらどうするんだ」
行かせはしない、そう言うかのようにフォンドヴォーが二人をぎゅうっと抱き締める。その腕の中で少年独特の輝いた目でフォンドヴォーを見上げ、バーグが言った。
「何でだ?フォンドヴォーはオレやコロッケの事、信頼してくれてないのか?」
「うっ」
「行かせてくれよ。危なくなったらすぐにフォンドヴォーを呼ぶから。なあ、フォンドヴォー」
「………仕方がないなあ…っ」
『イヤそこ仕方がないなあとかで済ませるとこじゃないだろうがよ』
呼ぶからとまで言ってくれた愛しいバーグのお願いに勝てるはずもなく、フォンドヴォーが顔をへらりとさせながら呟いた言葉にプリンプリンとウスターのツッコミがシンクロした。ちょうど追いついたところだったらしい。
「よーし、分かった!気をつけて行ってくるんだぞー、二人とも」
「わーい!サンキュー、フォンドヴォー!」
「おっしゃ!行くぜ、コロッケ!」
『だから人の話聞いてんのかそこの大人ーッ!?』
追いついてきたメンバーを全く気にする様子もなく、フォンドヴォーが小さい穴に消えゆく二人の背中を見送る。そしてやはり、プリンプリンとウスターのツッコミが届いている様子はない。
「いいんでしょうか、あれで」
「…もう知らん」
ハムの呟きにリゾットが頭を抱えたその瞬間。

どごぉ―――――…ん!

「!?」
コロッケとバーグが進んだ先で響く音。その振動が一行のいる空間にまで伝わってくる。
「地震だっぺか!?」
「…何か奥から変な匂いがするでっすよ!?」
「火薬だ。まずいな、量があって誘爆でも起きたらこの鉱山自体が崩れるかもしれない」
シャーベットの冷静な分析に、一行が道の奥へと進もうとするが早いか。
「コロッケ―――!!バーグ―――――っっ!!!」
誰よりも速く駆け出す大人が一人。
「…あいつ、岩壁をブチ抜いて行きおったぞ」
子供が通れるくらいの穴しかなかった岩壁に出来た棺桶型の穴に、タロまでもが呆けた溜め息を吐いた。

「あっれぇ?なんでこの子達がここにいるのぉ?」
一部崩落した鉱山の土壁の中に紫色の髪を見つけ、アンニンが身体を屈めた。
「我々の流した情報を嗅ぎつけて来たのだろう。こいつらがいると言う事は他の連中も近くにいるに違いない」
間違って作動してしまった火薬の処理を兵士に命令し、アンニンの後ろにバンバンジーがやってくる。
「そっか、じゃあ作戦は成功ね。でもどうしよう?この子達」
土に埋もれた二人はちゃんと息をしているがまだ起きる気配を見せない。二人の柔らかい頬をぷにぷにとつつきながら尋ねるアンニンにバンバンジーが答えた。
「人質にするとしよう。仲間が捕らえられているとあれば奴らもおいそれと手は出せまい」
「そうだね。じゃ、この子達を兵士に掘り出させて…」
アンニンが立ち上がった瞬間、彼女達がいたすぐ近くの壁が吹き飛んだ。
「きゃあっ!?」
「ぬっ!?もう来たかっ!」
もうもうと上がる土煙の中から現れるのはフォンドヴォーのシルエット。身体のそこかしこについた金属や土の汚れを気にする事もなく、即座に二人の―――正確にはバーグに近い場所の方―――側に膝を折って二人を覗き込んだ。
「バーグ!!コロッケ!!……アンニン、バンバンジー!お前達の仕業か!!」
「な、なんでそうなるの!?そりゃ爆発は起こっちゃったけど、それはその子達が偶然その近くにいたからで…」
『ハンバーグーで壁ブチ抜いてきた人間が言うセリフか――――!?後先考えろバカ―――――!!!』
フォンドヴォーの背中に飛んだツッコミはプリンプリン、ウスターに加えてリゾットのものも重なっていた。
「………何なんだ、こいつらは」
猛スピードで二人を掘り出すフォンドヴォーに、バンバンジーが何とも言えない視線を投げかけている。
「ど、どうしよう、兄さん?」
「人質をとるのは無理だが計画は進められる。兵を集めろ、アンニン。あいつらをぶちのめすぞ」
「はーい。みんな、お願いねー!」
後方へと退却したアンニンとバンバンジーを取り巻くように無数のキンダック兵が現れる。
「数を集めてきたでっすね」
「へへん、どんなに束になってもザコはザコだっぺよ」
「油断しちゃいけません!アンニンとバンバンジーが何か策を隠してるかも…」
キャベツ、Tボーン、ハムが背中合わせになり周囲を警戒している横で。
「すぐに片をつけてやるさ。ハン!バー!!グ――――!!!」
意識を失ったコロッケとバーグを助け出し、怒り心頭のフォンドヴォーが先手必勝とばかりに拳を握った。その手に宿った炎は通常の倍以上の熱気を放ち、高く差し上げられた手から天井に向かってほとばしる。
ジュッ。
「……まさか!」
真っ先に事態に気づいたシャーベットが彼にしては珍しい焦りの声を上げた。
「きゃ―――っ!?導線に引火してる――――っ!?」
『な、何――――――っ!?』
アンニンの絶叫にその場にいた全員が凍りつく。背の高いフォンドヴォーが掲げた手、そこから放たれたハンバーグーの炎が天井からぶら下がっていた火薬の導線に着火してしまったのだ。火はキンダック兵の奥、大量に詰まれた火薬へと一直線に走っていく。
「あ」
『『あ』じゃないだろうがいい加減にしろバカフォンドヴォ―――――――!!!』
何人分のツッコミが重なったのかを確かめる間もなく。
クレソン鉱山に爆音が響き、山に大きな穴を開ける勢いで鉱山は崩落したのだった。

この事件以来、フォンドヴォーがバーグとチームを別にして行動する事を余儀なくされたのは言うまでもなく。
「うう…バーグ…師匠~…」
「フォンドヴォー、落ち込むなよー。オレがいるじゃん!な!」
「そうだなあ」
コロッケの頭を撫でるも、あまりその励ましが耳に届いた様子はない。
「いいからとっとと先行ってキンダック軍の様子見てこいって」
「はぁ~…」
そして当分の間、他のメンバーの言う事に逆らえなかったのも当然の話だったりする。


END