Pegasus Passport(フォンドヴォー×Tボーン)



「じゃーね、Tボーン!」
「またいつでも遊びにくるっぺよー! 気をつけてなぁ!」
小さい手を全力で振る仲間に、Tボーンも満面の笑みで手を振り返した。
「ご飯おいしかった、ありがとうっておばさんに言っといてー!」
「ぷぎ、ぷーいー!」
大声で感謝を告げ、メンチを連れたコロッケがウェルウェル=ダンダン村の入り口目掛けて走り出す。友の背中が見えなくなるまで見送ってから、Tボーンはそっと玄関のドアを閉めた。
一週間ほど前に村の近くを通っていたコロッケとメンチ。彼らを偶然Tボーンの父が見つけ、家まで連れてきた。仲間の来訪をTボーンは家族ぐるみで歓迎し、コロッケはTボーンの弟達と遊んだり、大人数での食事風景に溶け込んだりして数日を過ごし、再びあてのない修行の旅へと戻っていった。
「コロッケが帰ったから、家の中も少し静かになるっぺな」
自室に戻る途中で子供部屋を覗くと、遊び疲れた弟達がタオルケットをかぶって熟睡していた。育ち盛りの弟達の相手にコロッケは適任で、野山を駆け回ったり魚を獲ったり、一緒になって遊んでくれる。ウスターの場合は弟に馬乗りになられてぺしゃんこになっているのを良く見かけた。
仲間達はウェルウェル=ダンダン村の近くを通りがかると顔を出してくれる。キャベツはいつも律儀にオコゲ道場への手土産を携え、だいたい季節が変わる頃にやってくるので、彼から定期的に仲間の様子を聞くことができた。リゾットはグランシェフの王子としての勉強等があるため、こちらに来るのは難しいらしい。プリンプリンは実家にいるようだし、何かの機会に二人に会いに行ってみようかとTボーンは時々思う。
「ちょっと昼寝するっぺかなあ」
用事でもあれば誰か起こしに来るだろう。自室のベッドに身を投げ出し、カーテン越しに見える夏の太陽にコロッケの道中の無事を願う。仲間が自分を訪ねて来てくれる喜びを噛み締めながら、深呼吸をしてTボーンは目を閉じた。
近隣の山から吹き下ろす空気には湿気が混じるが、部屋の窓を開けておけばほどよく風が通り抜ける。心地良く昼寝をたしなもうと思った、その時。
まどろみを擦り抜けるようにして、耳朶を打つ声。

『連絡が取りたくなったら、ここへ手紙か電話をくれればいい。立ち寄った時に確認するから』

「!」
勢いよく上半身をベッドから起こしてTボーンが室内を見回す。耳元で聞いたかのように明瞭な声だったのに、言葉の主はこの部屋にはいなかった。
「フォンドヴォー」
彼の声を聞いたのは、もう二か月も前になる。