Tom Yum(ロン毛×デフォ)

<登場人物紹介>

妹尾いつき
ロンゲ。案砂大二年生、語学・文学部所属。
少し自信家的な発言も見られるが優しい性格。女子にモテるものの、「いい人なんだけどね」で終わってしまう事多し。
子供の頃からの本好き。クイズの得意ジャンルは語学・文学、趣味・雑学、グルメ・生活(知識的な部分で)。

長嶋敦史
デフォ。案砂大二年生、経営情報学部所属。
苗字はミスタージャイアンツと同じだが(父親が大のGファン)、本人はどちらかといえばサッカーの方が好きらしい。
人なつこい性格のため友人は多い。クイズの得意ジャンルはスポーツ、自然科学(の科学)、漫画・アニメ・ゲーム。


パソコンの排熱具合を伺いながら、キーボードを叩いて二時間。ようやく課題のレポートをまとめ上げ、ワードファイルをプリントアウトしながら、僕は窓の外の様子を伺った。
「あれ、曇ってきてる。さっきまで晴れてたのに」
休日、朝早くに目が覚めれば空は快晴。ここぞとばかりに洗濯機を回し、布団のカバーやシーツもまとめて洗い、ベランダに干していた。しかし昼近くになって少し雲が出てきたらしい。風はあるので、もう少し置いておけばシーツも乾くと思うけど。
一度外に出て、干してあったTシャツやタンクトップを引き上げる。部屋干しするよりずっといい香りに仕上がった衣類を丁寧に畳み、引き出しにしまう。
なんだか、これだけでいい休日だと思えてしまう。そんな自分も嫌いじゃない。
「ついでに掃除機もかけちゃうかぁ」
動くとなるとそれなりに汗も出るので、掃除が終わったらシャワーを浴びよう。いつもはおろしたままの髪をゴムでひとつしばりにして、押し入れから掃除機を出し、部屋の中を動き回り始める。
本屋のバイトと大学がないオフの日でないと出来ない事だし、自分の気が向かないうちは手をつけない事でもあるので、僕がこの部屋を掃除する頻度は多いとは言えない。だからこそ、やる時は徹底的に。コロコロローラーも併用しての格闘は一時間近くに及んだ。
汗を流すためにシャワーを浴び、ついでに髪も洗う。乾ききらない髪もそのままに部屋に戻ると、天気は持ち直して再びベランダのシーツをあたたかく照らしてくれていた。
窓際、風のよく入るところに小さなマットレスを出し、仰向けに寝転がった。鼻先を気持ちのいい風が吹き抜けてゆく。このまま気を抜けば、そのまま熟睡できてしまうだろう。だけど、そうはいかない。
頑張って部屋を片付けたのは、これからここに来るお客様のため。
向こうはいつも「オレん家なんかもっと汚いんだから、そんな気ぃ遣わなくていいのに」って言うけどね。比較論じゃないと思うし、こういうの。
腕を伸ばし、コンセントに繋いでおいた携帯を確認する。少し前に、彼からのメールを着信していた。そろそろ来る。シーツを取り込んでおこうか。
「んー、いい匂い」
掃除機をかけている間にふっくらと乾いたシーツ。抱え込んで部屋に入れると、子供の時から親しんだおひさまの匂いが僕を包む。今思えば、あれは母さんが僕や姉さんのためにこまめに布団を干してくれていたからなんだと、二十歳になってみて思う。
さて、じゃあ、僕もいい匂いでお出迎えしようか。
タンクトップの上に、さっきまで干しておいたポロシャツをまとう。襟元からあたたかな匂いがこぼれる。今日は香水、つけなくていいよね。

ピンポーン。

示し合わせたようなタイミングで、あっつーが到着する。
「はーい、開けるよ」
玄関のドアを開けると、来訪者は服のポケットに携帯をしまったところだった。
「おいっす。悪い、DS充電させてくんね?」
「いいよ。お昼食べてきた?」
「いや、まだ。途中でゲーム屋寄って欲しかったソフト買ったのはいんだけどさ、本体電源切れてるとかありえねぇよなー」
「ちゃんと普段から充電しておけばいいでしょ。ご飯か、どうしようね」
「カレー持ってきた、レトルトの。東京の名店の味だっていうから買ってみた。あと、トムヤムクンスープの素。エビだけ用意すりゃ作れるってさ」
「エビはないからトム・ヤムだね。ご飯少ないからパックご飯足すよ」
「おっけえ」
勝手知った様子でコンセントを探し、携帯ゲームの充電を始める幼馴染。彼からレトルトのカレーとスープの素を受け取りながら、僕はあっつーの髪を撫でた。
「髪切ったんだ?」
「暑くなったしなー。いっちゃんは布団干したのか」
「分かる?」
「分かる。いー匂いするもんな」
嬉しそうに笑って、あっつーが僕のベッドへとダイブする。手足を大の字に放り出して、満足そうな顔でこちらに視線を向けた。
努力が報われる瞬間。一番見たかった顔が見れて、僕も自然と笑顔になった。

さあ、僕らにとって、素敵な時間のはじまり。


END